六月五日(日)雨
七時起床、高千穂峡へ。霧の中進む。八時半、道の駅で朝食。急な山道をうねうねと降りて行き、九時、高千穂峡に到着。チョウザメの泳ぐ池や三日月型の穴がある崖。そして木々の茂った崖の隙間、最も低いところを、緑の川が行く。この高低差はなかなかの見応えで、滝にも落差があった。手漕ぎのボートでその川を行く観光の人々。
一〇時出発。国見ヶ丘は眺望が良いとのことだったが、霧で覆われていた。一一時再度出発。内陸方面へ進んでいく。休憩をとりながら、阿蘇山の麓へ近づいて行く。そして一三時、白川水源に到着した。四L分、水の容器を持っていく。土産物屋の建物を横目に、川沿いの林道を少し行くと神社があり、その横にはなみなみと水の湧き出る池。白川水源。その透明度には驚いた。水底がはっきりと見え、僅かに青い。白い小石がぐらぐらと動き、水面が揺らめいていた。水がこんこんと湧き出していた。川の上流はないのに、来た道の方ではもう川の水音が響いていて、かなりの量の水が湧いていると分かった。この水源の守り神が奉られているという神社に参り、池の下手の水酌み場で水をもらった。柄杓で手にとるとひやりとして、飲んでみると混じりけなく澄んだ味のしない味。目一杯に酌んで戻った。
その水を使って昼食。玄米、野菜炒め、豆腐、漬け物。はっきりとは違わないが、合間に飲む水が美味しいこと。何も気にせずに飲めるというのが大きい。水田と山並みを眺めながら食事をした。休んでいる最中、寝具に放っていた眼鏡を肘で折ってしまった。もったいない。丁度変え時と思っていた矢先だったが、丁寧に扱わねば。
一五時半、片耳に眼鏡を掛けながら出発。阿蘇山周辺は地震の影響が残り、通行止めや、橋の陥落したところ、ごみや瓦礫の集積所、避難所などがあった。道路に所々ひびが入っており、山肌も崩れて一面の草の斜面にも土肌の露わになったところが目立った。山の斜面に建っているログハウスの、土台が半分ほど崩れて辛うじて建っているというような光景も見られた。
山道を行く。山並み、雲、空だけの景色に変わると、まるで天空に広がる草原を走っているかのようだ。
一七時、熊本県阿蘇市、大観峰に到着。…まさに絶景だった。天空の草原。一面の緑と、空だけが視界を埋めている。霧が流れて行く。風に揺れる露草。車の外に出ると外気は冷え、標高一〇〇〇mの高さを肌で感じる。辺りが暗くなるまで写真を撮った。もっと先へ進むつもりだったのだが、翌朝晴れることを願って、ここで一晩過ごすことにした。
写真の整理をして二一時に眠る。カメラのセンサーに異物が混入しているのを見つけたので、明日朝一番に処理しよう。夜中目が醒めると、辺りは霧が立ちこめてもう真っ白なのか真っ暗なのか、分からない。地に足が着いているかどうか不安にすらなるのだった。そんな中、空を見上げると霧の向こうで星が輝いている。不思議な光景だった。三脚を構えて空に向け、何枚か撮影した。