六月六日(月)晴
七時起床。センサークリーニングを行う。専用の道具が無いので手元にあるもので代用。割り箸を削って先を薄くし、レンズクリーニングペーパーを巻いて、レンズクリーニング用の液を塗ってローパスフィルターを掃除。一通り撫でたらレンズをつけて異物の写り込みを確認。余計に増えている。一時間以上かかったが良くならないので、明るい場所ではF値を一桁までに制限して撮影することにする。市街地の電機屋で道具を揃えよう。
九時半、気を取り直して朝食。その後大観峰の頂上へ。雲はあったが、もう夏のようなわた雲で、白く輝いて青空に映える。そして一面、起伏のある草原。素晴らしい風景だ。少し歩くと頂上に到着。一〇〇〇m弱の高さから、阿蘇山にかけての広大なカルデラを見渡す。東西に延びる峰と斜面は森と草原、その峰に囲まれた広い盆地には水田と街。あとは空と風。この上なく心地よい風だ。シャツの内を吹き抜ける、足下の草葉をなべて過ぎて行く。納得のいく写真は撮れなかった。風まで持ち帰れたらと思わずにいられない。いずれまた来よう。必ず来よう。
それにしても眺めの一番良いところで、なにやら人々が集まってたすきを掛け、祭壇を立て、合唱に読経に鈴を鳴らしてお祈りをし始めたので、他の観光の人々は怖がって近づかない。カメラの設定を間違えていたので、恐る恐る、その集団の真横まで戻ってばしばし撮り直して去った。
一二時、荷物を整えて大観峰を出発。ミルクロードと呼ばれる草原の間の道を行く。何度も何度も止まっては撮り、止まっては撮りを繰り返した。三〇分ほど走り、今度は入り組んだ農道へ。「鍋ヶ滝」への案内看板をたどって行くと、廃材を集めて作ったような案山子が並んでいて、田んぼに釣り竿を垂らしているものなどは、遠目に見ると実際の人かと見間違えた。さて、目的の滝に着く。受付で「地震の影響で、滝の裏側には入れません」との注意を受けた。カメラを二台もって、木製の階段を下りて行くと水音が大きくなっていく。水辺から少し奥へ進むと、見事な滝。「鍋ヶ滝」、幅およそ二〇m、高さおよそ一〇m、水のカーテンというにふさわしい。水しぶきが白く霧状に目の前を過ぎていき、周囲の岩場砂地はことごとく濡れていた。みずみずしい苔や草木に囲まれて日影になっているから、何とも涼しげだった。また来ることがあればぜひ裏から眺めたいと思う。
一三時半出発。大分へ。一五時、大きな電機店を見つけたので、センサークリーニングの道具を探してみる。珍しく置いてあったのでブロワーと併せて購入。早速使用した。粘着性の緩衝材のようなものでほこりを取り除く。まっさらとまではいかなかったが、新品同然といってもいいだろう。一七時、隣の複合施設で眼鏡屋を見つけ、新調する。結局今まで使っていたものは、両方のつるを折って鼻筋に押しつけてみたりした。もうまともには使えなかった。同じ系列の店で、似たようなデザインのもので、同じ度数のレンズを入れ、三〇分で出来上がり。大切に使おう。買い出しを済ませてコーヒー屋へ。ベイクド何とか何とか何とか何とか。二時間半。
二二時、大分県関崎へ出発。愛媛県の佐田岬と対を成す岬だ。別府湾沿いに出ると、暗い海際に巨大な工場。そこからは暗い森の中を、ヘッドライトだけを頼りに進む。闇夜を横切る羽虫の数々。二三時の火葬場前。登り下りを繰り返し、行き着いたのは豊後水道、暗闇の浜、「黒ヶ浜」。夜暗いから「黒ヶ浜」ではないのだろうが、それにしても暗い。夜釣りの人が光る浮きを海に投げているのだが、もはやどこに立ってどこに向けて投げているのかという話で、その光る浮きしか見えない。辺りを散策したが、森か闇かのどちらかだった。海辺の高台に車を止めると、向こうから狸が歩いて来る。車のライトを点けると一瞬立ち止まり、振り返って一目散。