四月二日(土)曇
荷物の確認をし、パソコンの接続等の調整をした。終わり次第手紙を書く。昔、こんな旅をしたいと話し合った人への手紙。旅の最中で行かれない、とある写真展のチケットを同封した。
家での食事納め。ひじきの煮物や漬け物、佃煮など。車に荷物を運び込んで並べ、寝床を確保したり机を置いたりと試行錯誤する。それも済ませると、筒井康隆の小説「旅のラゴス」で一息。
十四時半ごろ出発。無事に帰ろう。
折りを見ては自転車で通っていた東京湾への道のりを、車で辿って江東区新木場へ。郊外から、都心へ、古風な東京駅舎を過ぎ、銀座を通っていく。どこも車の多い通りだ。途中、カーナビを台座から外して助手席の引き出しに押し込んだ。しかしこの日の目的地直前で道を誤り、大回りで戻る。海沿いの店で食料の買い出しを済ませ、本屋に立ち寄った。
日が沈んでから車に戻ると、もうすでに孤独に気圧されていた。白旗の準備は万端だった。気分ではなかったが、空腹の求めに応じて果物を一つ口にする。美味しい、しかしどこか上の空で飲み下すだけのようでもあった。ラジオを流して進むと幾分か気は紛れた。改めてこの日の到着地点を目指す。これまで繰り返してきた小さな旅の到着地点。それを今回の旅の出発地点であるように感じながら。
新木場駅を過ぎ、若洲という荒川の河口を望む遊歩道脇の小道に入ると行き止まり。車を止めて走行の記録等をつけて、夜の海辺に写真を撮りに出ると、丁度向こう岸の夢の国から花火が上がっていた。三脚を構え、新入りのカメラで撮影。花火が終わってしまってから、南の端まで一kmほど歩く。観覧車や駅、宿泊施設等の灯りが遠くに見えるばかりで、その他はもうただ広い、暗い海の風景だった。この河口には朝に夕に、昼に夜中に、十数回来ただろうか。家から最も近く海を望む場所。歩道脇のベンチに座っては、ただ身体を休める場所。ここ数年は来ていなかったが、相変わらず寂しい場所だった。西側の工業地帯の夜景を撮影し、車に戻る。良い機会になることを漠然と願った。