四月二五日(月)晴
五時半、もうすっかり明るくなっている。寝袋に入っていたことに気づくと、旅の途中だったことを思い出す。
朝の海の風景を撮る。また素晴らしい海の景色が見られた。朝食にはうどん、もやし、油揚げ、ねぎ。
近くの水たまりに、つばめやうぐいすが来て水を飲み、車の中にいる自分に気づいて飛び去っていく。
七時半、富山県に向けて出発。白川郷にもたどり着けるだろうか。海沿いの道、山肌のトンネルの窓から見下ろした海の景色は、朝の太陽の光を受け流して、青く澄んでいた。特徴も無い景色だったが、見とれながら進んだ。
九時休憩。黒部・立山の山並みが見えてきた。白く雪を被っていた。一二時には富山市に到着し、昼食をとった。とうふ、薬味。果物がほしいところだ。ここまで一五〇km近く走ってきたが、三週間でまた戻ることを考えるとあまり余裕がなかった。内陸部の白川郷を経由するとなれば尚更だ。せっかく近くまで来ていることだから一目見ておこうと、一三時再び出発。
瓦屋根の波がだんだんとまばらになってくると、古き良き時代の日本の風景が戻ってくるかのようだった。広い水田の一画に民家が点々とあり、道の脇に水路が音を立てている、その背景には新緑の木々に満ちた山々、青空。のどかな春の日だった。山道に入り、トンネルや川に沿った道を走る。川の水がターコイズブルーで濁っているように見える。大きな橋や、短い橋などいくつかあったが、「合掌大橋」の前後では、川を越す度に、富山県と岐阜県に何度か入れ替わっていた。それにしても山間深く、ひっそりとしたところだ。こんなところがまだ残っていたのかと改めて思う。途中ふと見えた合掌づくりの家々に驚く。太古の日本の風景そのものだった。一四時、道の駅上平に車を止めて休んだ。休憩が多い。距離が長いこともあるが、エネルギーの問題でもありそうだ。果物を補給し、元気を取り戻して出発。一五時半、岐阜県白川郷に到着。車を止めてカメラを二台持っていく。
村の景色の美しさは眼を見張るものがあった。茅葺きの屋根、木造の家屋、庭の植木は建物に添う、芝、草花、水田、水路、背景には緑豊かな山々。川が流れ、森も田畑も潤っていて、虫がおり、つばめが軒下に巣をもって子育てに勤しむ。車両のけたたましい走行音もクラクションも全くない。風の音、水の音、鳥の声、虫の声。都会では失われた豊かさがここにあった。写真では伝わらない風景だろう。
一七時半、夕暮れ時までゆっくりと歩いて周り、車に戻った。やはり来て良かった。村のはずれでガソリンを入れ、日の暮れた山道を富山県高岡市まで戻る。途中、山の展望所から街の明かりを写真に撮った。暗くなった水田の間や、川沿いを走り抜けて、二〇時半に新高岡駅に到着。夕食。食後の休憩中に寝入ってしまった。疲れていたのか。二三時に移動して車を止めて眠った。