四月二八日(木)雨のち晴れ
一晩中、車の横に立つ松の枝葉が車に打ちつけていた。朝は雨が弱まっていた。七時半、朝食後に東尋坊へ。朝早く、ひと気もなかった。土産屋、食事処の間の階段を下っていくと、岩場が見えてきた。大きな六角柱や五角柱をいくつも束ねたような岩場が海に突きだしていた。珍しい光景だった。これは地下浅いところまで溶岩が沸き上がり、冷却面に垂直に、効率のよい、三角形を組み合わせた冷え固まり方をして形成されたものが、波で削られた地表から現れ出たという。一〇数mもの高さの岩場が海に迫り出していて、谷間の底には荒波が寄せていた。雄大な眺めだった。
カメラをタオルにくるみながら撮影。一回り歩いてその場を後にする。八時半、早速だが滋賀県大津市、琵琶湖の方面へ向かった。快適なスピードで流して行く。
途中道の駅、追坂峠で食事をした。建物の裏手に回ると遠くに琵琶湖が見えた。雲が晴れて輝いている。さらに近づくと、まるで海のように大きく、対岸は曇っていて見えなかった。
湖上には真っ白に雲が差していて、とても幻想的だった。そんな中、突然水上鳥居が現れて、さらに神秘的な風景となった。すぐに車を止めて、カメラを持って出る。傘も必要だった。
素晴らしい。言葉が出ない。夢中で写真を撮った。レンズが雨に濡れていた。一度車に戻って拭き上げる。白髭神社、賽銭を投げて再び夢中で撮った。真っ白な水面に大きな鳥居。鳥が一羽止まっている。風に波立つ。だんだんと雨が上がり、南の山の手から晴れていって、壮大な雲と陽射しの景色が生まれた。強い風に刻々と表情を変える。雲間から光が溢れている。琵琶湖の対岸も見えだした。これを見せるための天気だったのではないかと、思い込んでしまうような絶景だった。車に戻ったが、また途中で雲間の風景を撮ったりした。琵琶湖を充分に満喫した。まだまだ魅力があるのだろうが、今日はもうこれで充分だった。
京都へ進路を変更、風が出て、若葉が舞っていた。青空と白い雲の対比が春らしい。京都の中心に近づくと、結構な渋滞だった。長いことかかって西側に出る。車の流れが多少落ち着いたところで買い物と休憩。ふと入り込んだ路地の先に、休耕畑なのか、花畑が広がっていた。こんな街中に珍しい。白地に紫が差していて、雨に濡れている。薄暗くなってきているが、車を降りて撮った。その後買い物、書店で写真集を見たり、カフェで記録をしたり。周りの客達の話し言葉が心地よい。西の言葉は綺麗で落ち着く。
二一時、明日の撮影場所を考える。そういえば以前「伏見稲荷大社」に行きたいと願っていたのだった。明日は連休初日で混むだろうと思って、早朝に参拝しようと思ったが、夜通し参拝が出来るということだった。近くで朝を待とうと思ったが、そのまま直行した。二二時、着いてみると良く整備された参道に駐車場、立派な鳥居と門、照明も丁度良い明るさで素敵な雰囲気が漂っている。車を止めて三脚とカメラを持って出る。他にも参拝者の姿があった。
目当ては千本鳥居だ。人工物は圧倒的な数、桁が増えると人を黙らせる力をもつと思う。紙に丸を描いていくだけでもそうだ。コンビニなんて三軒並べるだけで驚く。さて本殿の左奥に進み、段を上がっていくとそれらがあった。圧倒的な数の鳥居。まるで屋根付きの廊下のように朱々と続いている。途中それがさらに分かれ道になっていた。四〇本に一つくらいの間隔で照明がある。絶妙な明るさ。全く初めての風景だった。写真を撮りながら三時間、夜中まで散策していた。また明日朝、撮ることにしよう。大社の付近で朝を待った。