五時二六日(木)曇
六時に起きる。昨日の反省により食事は後回し。七時に出発。朝の通勤時間と重なってしまったが、ラジオから流れてきた弦楽のクラシックを聴いていると何とも優雅な朝だ。クライスラーやリヒャルトシュトラウス。地元の人々の運転は荒く、車線変更や追い越しが目立った。一〇時半、福岡市に着く。朝食にサンドイッチ、野菜スープ。一一時にコーヒー屋。五時間。記録の後、久しぶりに読書の時間を取った。(ノートありの読書)その後買い出し。野菜を買いすぎた。どんどん食べよう。
一七時出発、佐賀県へ。夕暮れ迫るなか、海沿いや田園の合間を走り、県の北部、大浦へ向かう。のどかな山間の道を上って行き、一八時、目的の場所に到着した。大浦の棚田。山の西側の斜面に沿って、広大な棚田が広がっていた。遠く離れた入り江の漁港まで、階段状の棚田が続いている。陸地が途切れた先には、大気の霞に溶け込む伊万里湾、そこに浮かぶ島々。爽やかな早苗の黄緑と空や海の水色が調和している。音もなく静かだった。北の山の向こうに陽が落ちていくまで、写真を撮った。陽が隠れると光が弱まり、それと同時に蛙が一匹、二匹と鳴き始める。どこか懐かしさを感じるのだった。この国の人々が、長い間手を掛けて保ってきた風景なのだと思う。
山を下り、伊万里市へ移動。夕食、毎度味は最高だ。その後二一時半、温泉へ。二三時半、湯上がりに夜道を移動。風が心地よい。もう紫陽花が咲いているようだ。二四時、藤山神社を訪れた。藤の巨木があるという。脇道から覗くと、境内から敷地の外まで、藤蔓の屋根に埋め尽くされていた。しかしもう花びらは一枚も見あたらなかった。自分はまだ藤の季節に疎く、標高の高い山地で見かけていたイメージのまままだ咲いているのだろうと思っていたが、九州ではもう初夏、紫陽花の季節だった。一所に根を下ろさない旅の間は、どうも季節感が希薄になるようだ。