日本一周 [ 54日目 ]
ふと祠の横の、森に続く道があったような気がして、もう一度階段を上っていき、薄暗い脇道を進んでみた。鬱蒼と茂った木々の間に、確かに土肌の道が
ふと祠の横の、森に続く道があったような気がして、もう一度階段を上っていき、薄暗い脇道を進んでみた。鬱蒼と茂った木々の間に、確かに土肌の道が
一〇〇mほどもある施設の端から端まで、書棚と、その中に本がずらりと並んでいる。
長崎港と市街地全土の素晴らしい夜景。本当に素晴らしい夜景
このような壮絶な冒険があったと知る度、自分の旅の穏やかさを思う。
大気の霞に溶け込む伊万里湾、そこに浮かぶ島々。爽やかな早苗の黄緑と空や海の水色が調和している。音もなく静か
一二時半、九州に突入。一人拍手。
「砂暦」、世界最大の砂時計
やはり正面から詣でるべきだったな。壮観だ。
ふと横を見るとらくだが歩いてきた。観光客を乗せて砂地に小さく円を描いて戻る。そんなことはどうでもいい。この砂の量。圧倒的な量
全くの静寂、陰性の音が耳に痛いほど。暗い山の展望所に降り立つ。眼下に、とてつもない絶景が広がっていた。何だこれは。
地元の人々の暮らしぶりが目に入る。古い町並みの中で、自転車で駆け回ったり、梅の実を集めたりして遊んでいる子ども。洒落た花屋の仕入れの風景、街行く買い物客。
金属と石の擦れる嫌な音が一鳴り、すぐにブレーキをかけてエンジンを切った。やってしまったな。
外の景色を見に、窓を開ける。耳を疑うような静けさだった。鳥の声と、遠くで流れる川の水音
獣の喚き声や落石と思われる騒々しい音が、ひと気のない暗い山に響く
かつて日本という国には、旅人の黄金時代があった。
なんて爽やかなのだろうか。窓から風と陽射しを取り込むと、あまりの心地良さに頬が緩んだ。
ガラスの小さなボウルにはドライオレンジやビスケットやクッキー。木肌のカウンターで、
窓を伝う雨だれを
安住を捨て
青い蜻蛉が蝶のような羽使いで舞って来て、腕を差し出すと止まった。
海のまだ低いところに、銀河の形がはっきりと現れて観える。濃い紫の天の川
横一線、一八〇度の水平線に、白い灯台。西寄りは特に開けて、海と空だけが見えるかのようだった。心なしか、地球の丸みが水平線に表れている。
波際までの残り一〇数歩がどうにも恐ろしく、足がすくんだ。
心地よい陽射しと風の中を、四万十川の流れに沿って進む。山と川だけの穏やかな風景が続く。川が大きく弧を描いた一画に差し掛かると
強い風に、金色の穂波が大きくなびいている。大気の形をはっきりと表すかのように、大きな風の手が一撫で一撫で麦穂を倒して去る。しなやかに起きあがってはまた次の風に揺れる穂。擦れ合う音、勢いを増す風。
ーーーー…読者よ、いまありありと思い出し給え。
大塚国際美術館に行かねばならない。「いつか行こう」が早一〇年経っている。たぶんそのままだと二〇年になってしまうだろう。そしてそのまま行かずに一生を終える。
どこか聞き覚えのある、迫力のある女性の男声。きらびやかな衣装とあの独特の抑揚。
もう結論は出ていて、それを追認してゆくようなものだった。
素晴らしい。言葉が出ない。夢中で写真を撮った。